研修参加者レポート

文化・学術専門家日本語研修(6か月)


平成28年度 文化・学術専門家日本語研修(6か月コース)
研修期間:2016年10月5日-2017年4月5日

「アカデミック・コミュニティ」

ロバート・ホーン(英国)

 もうすぐ私達のグループは帰国しますが、この文を書いている今、関西国際センターで過ごした6ヶ月間の思い出がたくさん浮かんできます。きっと、私達全員の強い気持ちは、関西国際センターの先生方や司書方、センタースタッフへの「ありがとう」に違いありません。
 最近、食堂や図書館でグループのメンバーに出会うと、「そろそろ終わりますね。帰りたくないよ」と言っている人がたくさんいます。なぜなら、関西国際センターで過ごした時間は、私達に貴重な経験だったからだと思います。このコースへの参加のおかげで、3つの成果がありました。まず、私達の日本語レベルが向上して、私達の研究が進んで、そして、いろいろな国の人と交流できました。 ca1.jpg
 このコースは、参加者にとって、日本語を理解するためだけではなく、自分の研究をうまくいくようにするためなので、日本でどうやって研究をするのかについて、チューターと一緒に相談する個別授業もあります。このコースは参加者のニーズによく合わせて設計されています。
 授業は基本的には月曜日から木曜日まで。週末は、自分の時間がありますから、センターで日本語を勉強したり、あちこちで専門活動をすることも出来ます。 その上、6ヶ月間で2回、専門活動集中期間があります。どのような研究テーマや研究方法でも、例えば、資料館で資料を集めることが必要な場合も、あるいは、教授や専門家と相談したい場合も、きっとしたい研究が出来るようになるはずです。
 センターで、自分の研究を日本語で発表するチャンスもありますので、このコースの設計は、日本に深い興味を持っていたり、将来日本で働きたいと考えている人にとって、とても役に立つと思います。非常に良い経験になるでしょう。総合日本語のクラスで何回も作文を書いたので、日本語で書けなかったことが、書けるようになりました。また、文章表現のクラスでは、日本のスタイルの研究計画書を書く機会がありました。後期にレポートや計画書を書く時、先生方は私達のミスをはっきり説明し、いつもていねいに指導してくれました。私にとって、日本語学習コースの一番印象的なことは、先生方の態度や努力で、私達参加者はいろいろなことを大変お世話になりました。ca2.jpg
 センターにある図書館は非常に良いところで、司書の方達もとても親切だと思います。日本全国のどの大学からでも、本を借りることが出来ますので、センターの図書館はとても便利です。私達は、司書の方々に大変お世話になりました。
 このセンターに来る理由は、もちろん、自分の研究のため、日本語能力のレベルアップが目的でした。日本に来る前に6ヶ月間はかなり長い時間だと思っていました。 授業や自習や研究以外にも、関西国際センターで面白い生活が出来るのか、そして、どのような人々と会うのか分かりませんでした。でも、センターの生活はかなり面白いです。いろいろな国からの外交官や研究者や日本語教師が滞在しますので、様々なことが習えるチャンスが多いと思います。
 国際交流基金のおかげで、自分の研究の内容だけでなく、日本語はもちろん、日本での研究のやり方や日本文化の豊かさがもっと分かって来ました。6ヶ月間で、他の参加者と同じ建物に住みながら勉強しているので、本当に良い「アカデミック・コミュニティ」でした。日本に関してや、他の研究分野の興味深い話を聞いて、日本への興味や知識が深くなり、広がりました。本当に、この6ヶ月間は豊かな経験ができたと思います。

「専門読解」について

李熙媛(韓国)

 このプログラムに参加される方は、基本的に日本、そして日本語に深くつながっている研究対象を心の中に抱いておられると思います。私は日本帝国主義時代の末期、日本で文学家として活動した「金史良」の作品を当時の日本語で読むことを一番重要な目標として、このプログラムに参加しました。私はこのプログラムに参加する前まで、日本語をちゃんと勉強したことがない状態だったので、このような目標をまともに行うことができるかどうか心配していました。さらに、現代日本語でもなく、1930-1940年代の日本語で書いてある金史良の作品を読むことが可能なのかというのも不安でした。

33.png しかし金史良作品の日本語のオリジナル作品を読むことは、どうしてもしてみたい研究活動だったので、プログラム開始1ヶ月後ぐらいから、担当の先生と一緒に金史良の作品を読み始めました。初めて読んだ作品は、金史良の文壇デビュー作、「光の中に」でした。漢字の知識が豊富でもなく、日本語の文法に慣れてもいなかったので、私は作品を1行読むのにも、辞書を手にして文字一つ一つの意味を理解しながら進めていました。非常に多くの時間がかかり、内容理解に難しい点も多かったです。それにもかかわらず、私は「光の中に」を読んで、金史良作品の中で最も大きな意味を持っていたと思う作品である「天馬」も読むこともできました。
 今、韓国で金史良の主な作品は見事な翻訳があります。ですけど、翻訳だけ読んで研究を進めることは、どうしても満足できない面があります。やはり、今回原本を読む作業をしてみると、原本だけが伝えることができる文学作品の文脈的意味と、作家が表したかった部分だと思われる芸術的形象化のポイントが見えました。特に一字一字の意味を把握しながら作品を読む過程は、まるで私自身が作家になって作品を書き出しているような感じがするほど、作品が私の中で新たに組み替えられていきました。非常に興味深く、貴重な経験でした。
 もし一人でこれを進めたら、こんなに短い時間で不可能だったと考えます。ca4.jpgこのようなことが可能のは、1週間に1回継続的に担当の先生と一緒に読解をしたおかげでした。担当の先生は私の読み取り速度に合わせて読み取りを助けてくださって、当代の社会の雰囲気の理解と文法の特徴についての知識をもとに、作品について一緒に話を交わしてくれました。そして私が最後までこの過程を続けることができるように手伝ってくださいました。
 今回の研修活動を通じて、日本語についての理解と研究活動に役立ついろんなことを学ぶのができましたが、何よりも大切で意味あった作業は、まさにこの専門読解の時間だったと、ためらうことなく言うことができます。今後、このプログラムに参加される研究者の方も、このような経験を通して、研究に深さを加えることができると思います。ありがとうございました。

研究を広げてくれた日本語トレーニング

陳品姮(台湾/ドイツ)

 「今年は、大阪は桜が咲くのが遅いのは残念ですね」と友人からメールが届きました。ドイツに戻るまで1週間前の今、6ヶ月間の研修が終わりに近づいているということは、まだまだ実感がありません。

ca5.jpg 私は文化人類学者で、専攻は視覚文化論とラテンアメリカ地域です。この研修に参加する前に、19世紀の中米への日本人移民で写真家である屋須弘平(Juan José de Jesús Yas)に関する博士論文のための資料を収集するために、何度か日本を訪れました。初めは、主にスペイン語の資料で調べる予定でした。しかし、日本には屋須についての多くの展覧会や出版物があることに気がついたので、日本語の文書の理解が研究にとって重要になりました。
 文化・学術専門家日本語研修では、私たちの言語能力に合わせたクラスを用意してくれました。文法、読解、文章表現、会話のクラスでは非常に役に立つ訓練を受けましたが、そのすべてが小さなクラスのため、特に効果的でした。また、私たちは、研究計画書やレポートを作成、口頭発表など、研究の進歩に合わせた授業を受けました。私が最も楽しんだことは、図書館で先生と一緒に研究資料を読んで話し合う時間でした。ca6.jpgこれらの討論から多くの洞察とインスピレーションを得ました。
 今年2月、岩手県の屋須の故郷である藤沢=写真=に再び訪問した時、今まで日本語で話せなかったことが話せるようになり、屋須の人生について新しいことを聞くことができて、とても楽しかったです。このすべてが私の研究を大いに豊かにしました。
 桜はまだ咲いていません。しかし、センターに滞在している間のイメージは、たくさん頭の中にあります。窓からの大阪湾の景色、カモメ、センター周辺の猫、書道クラス、山の中の寺院、図書館、毎週水曜日の連絡会で共有したお菓子、先生たちのトークやジョーク。大阪での研修を振り返るとき、そこにはいつも、たくさんの大好きな思い出が一緒にあります。

日本漢籍とのふれあい

ヨウ・キン(中国/オーストラリア)

  私の研究領域は中国の歴史と経典で、この六ヶ月に様々なデータベースとデジタルアーカイブで探して、「図書館間相互貸借」(即ち、ILL、この名前を付けた方がすごくユーモアがあるかも)のサービスを通じて、研究資料を借りて読みました。ca7.jpg
 ちょっと奇妙かも知れませんが、日本の中国経典研究の伝統は実は非常に深くて優れていました。昔から漢字で書かれた文献が大量に保存されていて、また、解釈もされていたからです。これらの本は、今現在の図書分類で「漢籍」と呼ばれて、各地の公的、私的な図書館、または大学やお寺に保存されています。
 関西国際センターからの支援(経費や計画作成、調べ方など)のお陰で、私は研究資料を収集のため、京都と東京へ数回行って、中国史料について世界有数の文庫と図書館を訪問しました。文庫によって、場所や雰囲気、また複写のサービス(もちろん価格も)などが異なっていますが、その便利さと満足度といえば、どこも素晴らしいです。例えば、三菱財団の岩崎家が設立した静嘉ca8.jpg堂文庫=写真=は、東京世田谷区の木がいっぱいある静かな山の上にあります。参道のような坂を上ると、大正時代にデザインされた西洋風のビルが見えます。中に入ると、一階にある閲覧室は、座席が十数ぐらいだけ、面会室だったような所です。ここで座って、事前に予約した二百年、三百年以前の本を捲るうちに、濃い黄色のページからの古い匂いを吸い込みました。すぐ気持ちよくなって、ずいぶん落ち着きました。このような素晴らしい体験について延々と話せますが、やはり自分で体験してみるのが一番良いと思うので、ここまでで止めておきます。

 センター図書館の司書さんが、私の資料収集の活動を丁寧にサポートしてくれました。いつも親切に本をほかの図書館から運んできてくれたり、読書記録を細かく作ってくれたりして、私の文献「経理人」だと思っていました。また、彼女たちは童話に出てくる優しい魔法使いのように、私の「甚だしい」要求を満たしてくれました。こんな便利さと心温まる体験は、実ははじめでです。優れた研修プログラムによる貴重な研究資料との出会いを思うと、今でも心が躍ります。

田尻町を楽しもう!

ジョ・イクサン(韓国)

 このプログラムで専門的な日本語を勉強しに来ましたが、6ヶ月間の毎日毎時間、勉強だけする訳ではないでしょう。それで、国際交流基金関西国際センターを中心に半径約3kmの中でできる余暇活動について話してみることにします。ca9.jpg
 散歩やジョギング。センターから3分ほど歩いていくと、ビーチの遊歩道があります。「マーブルビーチ」=写真=というビーチですが、散歩するにもジョギングにも最適です。もちろん座って海を見て波の音を聞くことも最高ですね。センターの受付けでグリルを借りれば、この公園でバーベキューパーティーをすることもできますよ。センターから一番近くにある最高の場所です。お勧めです!そのすぐ周辺のヨットが停泊している「りんくうポート北」も風情があります。特に猫が多いので、猫派なら猫のおやつを持って歩いて見ましょう。 10匹のうち、1匹程度は触れることも可能です。
 一生懸命運動したい場合。センターの中にも、簡単な運動をするスペースがありますが、他にも運動に適切な場所があります。自転車で15分ぐらいの距離にある「末広公園」の体育施設です。私は運動派ではないので、行ったことはないですが、合気道、水泳、トランポリン等々、様々な運動を無料で学んだり、やったりすることができるそうです。 6ヶ月の間通った人達の皆が勧めました。
 食べ物。美味しいものは多いですが、大阪と言えば思い出すお好み焼きの店をまず紹介します。自転車で約10分の距離にある吉見ノ里駅の近くにスタイルが異なるお好み焼き屋が二箇所あります。「A」と「B」です。前者は家庭的な感じ、後者は若者向きの感じで、すべて美味いです。マスターの方もみんなセンターのプログラムを知っているし、大阪弁の専門家なので、会話のやりとりも興味深いと思います。ラーメンはセンターのすぐそばの「C」や羽倉崎駅の周辺の「D」がおいしいです。
 最後は飲み物。この近所で最も残念なことは、おそらくカフェが少ないことでしょう。大手のチェーン店以外はほとんどないように思えます。しかし、居酒屋は多いです。最もお勧めしたいのは、羽倉崎駅から5分ぐらいの距離にある「E」です。雰囲気も味も素晴らしいです。その他にも羽倉崎駅の辺りにはよい店が多いので、地域経済にも貢献しながら楽しむのはどうですか。
 紹介したい所はもっと多いですが、やはり直接見つけるのが最高の楽しみでしょう。6ヶ月の間に勉強もみっしりしながら見つけてください。受付けや先生に聞いてみるのもいいでしょう(A~Eの店の名前も教えてくれると思います)。では、楽しんでくださいね。

 



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