日本語教育シンポジウム「ひらく・つなぐ・つくる 日本語教育の現場」国際交流基金関西国際センター

国際交流基金関西国際センター

パネルディスカッション

概要

「日本語でケアナビ」は、国際交流基金関西国際センターが開発した日本語教育支援Webツールです。その開発プロジェクトでは、フィリピン人日本語教師、医療英語通訳翻訳者、Webデザイナー、看護・介護分野の専門家など、多様な立場の人々と、企画、制作、検証の各段階で連携が行われてきました。

パネルディスカッションでは、「日本語でケアナビ」開発を一つのケースとして、関係者らが振り返り、検討します。

  • 開発チーム内で、どのような実践が行われていたか
  • このプロジェクトは、外部関係者とどのように連携し、そこで何が生まれたか
  • このプロジェクトとの関わりを、関係者らはどのように見るか

関連する話題について、ブログ「こちら『日本語でケアナビ』開発室」で開発メンバーが語っています。ぜひご覧ください。

開催時間

午前の部(10:00 - 12:00)

モデレーター

田中哲哉(国際交流基金関西国際センター)

パネリスト

上田 和子(国際交流基金関西国際センター 日本語教育専門員)
開発チームのウチとソト:プロジェクト運営の視点
ジョイ デヴェラ Joy Devera (首都大学東京 講師)
使う人のためのコンテンツづくり:日本語教育、ノンネイティブ日本語教師の視点
水野 真木子(千里金蘭大学 准教授)
伝えるためのコンテンツづくり:医療英語通訳翻訳の視点
角南 北斗(フリーランス Webデザイナー)
サイトの見せ方の仕組み:Webデザインの視点
原田 マリアフェ(オリエンタル株式会社 ホームヘルパー)
使う人から見たサイト:エンドユーザーの視点

コメンテーター

石井恵理子(東京女子大学 准教授)

詳細

「日本語でケアナビ」は、国際交流基金関西国際センターが開発した日本語教育支援Webツールです。私たち開発チームは、「日本語でケアナビ」を「つくる」ために、フィリピン人日本語教師、医療英語通訳翻訳者、Webデザイナー、看護・介護分野の専門家など、多様な立場の人々と、企画、制作、検証の各段階で「つなぐ」ことを試み、それによって「つくる」ことが進んでいきました。そして、その成果や過程を社会に「ひらく」ことに挑みました。このような実践には様々なまなびがあったと言えます。パネルディスカッションでは、「日本語でケアナビ」開発プロジェクトをケースとして、関係者らがそれを語ります。

まず、「日本語でケアナビ」とはどのようなものか、目的、内容の概略について紹介します。「看護・介護のための日本語教育支援データベース」開発プロジェクトが始まったときは、まさに暗中模索でした。看護・介護分野で働く人の日本語教育支援のため、何を目指すべきか、どのような方法をとるべきか、話し合いが続きました。日本語教師に何ができるのか、何をしなければならないのか、答えさがしを導いてくれたものは何だったのか、上田和子さんがチームを代表して語ります。

専門分野を持つ学習者のためのデータベース作りでは、専門用語だけでなく、誰が何のために、何をどのように使うのかという「使い手の視点」を考えることが欠かせません。フィリピン人日本語学習者や日本語教師から、開発チームはコンテンツ作りやインターフェースのデザインへのヒントなど、多くのものを得てきました。ジョイ・デヴェラさんがノンネイティブ日本語教師の視点から、このプロジェクトとの出会い、そして、フィリピン人日本語学習者の求める日本語教育、ノンネイティブ日本語教師の貢献の可能性について語ります。

辞書ツールとしてサイトを提供するためには、日本語と外国語のデータが必要です。「日本語でケアナビ」には看護用語や介護用語のほかに、日常の動作やしぐさを表す表現がふんだんに盛り込まれています。さらに、人間関係を反映した表現や、家族観や死生観などを含む表現を見ると、ことばは文化と密接に関係していることがわかります。データベースに取り上げた日本語と日本文化に関する情報を、いかに的確に英語で提供するかは、「日本語でケアナビ」プロジェクトの生命線であると言えます。水野真木子さんが、英語の医療通訳・翻訳の視点から、このプロジェクトの特徴とそこに見る問題点について語ります。

コツコツと積み上げていったデータは、インターネットサイトとして形作られ、ユーザーに提供されます。紙に書いたデータがパソコンの画面でどのように現れて、どのように検索できるようになるのか、データを作っていても実感はあまりありませんでした。そんな私たちが、「看護・介護のための日本語教育支援データベース」が「日本語でケアナビ」に変身した瞬間から、「使いやすさ」について具体的に考えるようになりました。「日本語でケアナビ」を「使いやすいもの」「親しみやすいもの」として提供する、そのためにどのようなデザインの工夫と試みがあったのか、ウェブでの「見せ方」について、角南北斗さんがITシステム・デザインの視点から語ります。

それぞれの専門家とのやり取りの中で、開発チームの一人ひとりは「日本語でケアナビ」に対する考え方に影響を受けていきました。いえ、自分の日本語教育観にさえ、変化を感じ始めたのです。実際にこのサイトを使う人々が、仕事の現場でどのような日本語を必要としているのか、そこで「日本語でケアナビ」は、本当に役に立つツールとして使命を果たせるのか、確かめたいという気持ちがつのりました。それに応えてくれたのが日本語を使って働いている人々です。「日本語でケアナビ」がその人の仕事、生活、日本語学習に力を与えているのか、「日本語でケアナビ」のエンドユーザーを代表して、原田マリアフェさんが、ケアの現場の仕事と日本語への取り組みについて語ります。

「日本語でケアナビ」開発で、私たちは専門家たちと「つながり」ながら、「ものづくり」の実践を行ってきました。外とのつながりという意味で、開発チームはプロジェクトの「ハブ機能」を果たしていたと言えます。一方、プロジェクトの実践を通じて、内側にも知的創造が生まれていました。それらをあわせて論じていきたいと思います。